『ひなぎく』 ~サイケな毒入りサラダ~
1966年/チェコ・スロバキア/75分
監督:ヴェラ・ヒティロヴァ
脚本:ヴェラ・ヒティロヴァ,エステル・クルンバホヴァ
撮影:ヤロスラフ・クチェラ
音楽:イジィ・シュスト,イジィ・シュルトル
出演:
イヴァナ・カルバノヴァ
イトカ・チェルホヴァ
今回は,京都みなみ会館で観たかなりマニアックな東欧映画です。
チェコ・ヌーヴェルヴァーグの代表作なのだそうですが,私はまったく知らない作品・・だいたいチェコ・スロバキアの映画なんて観る機会がないですからね。
作品内容はというと,何だかわけのわからない奇想のオンパレード。ちょっと一言では語れないぐらい。
主人公は二人の若い女の子で,年配のオッサンをたぶらかしては弄んだりするのですが,ストーリーはほとんどないに等しく,演出も即興性に満ちて,しかも映画の進行とともに,すべてがナンセンスに崩壊していくんですね。
二人は,ついには,ハサミでチョキチョキ腕や首を切り離したり,画面全体が切り刻まれたり(自分で書いてて,何のこっちゃわかりませんが・・^^;)。
クライマックスは,誰もいない豪勢なパーティ会場で,二人の女子がご馳走を食い散らかし,テーブルに乗って踊り暴れまわる。料理をグチャグチャに踏みつぶしながら・・
作品はカラー部分とモノクロ着色版を頻繁に切り替えて,映像リズムを出そうとしているようですが,残念なことに,カラーフィルムの部分が見るも無残に褪色していて,目を凝らして見ないと,色がついていることさえわからないほど。
これでは効果半減未満ですねぇ・・(溜息)
60年代後半といえば,世界的に「サイケ」全盛時代だし,原版はそうとうメリハリの利いたヴィヴィッドな色合いだったと想像されるのですが・・
この点は,本作がかの社会主義国において,いかにムゲに扱われてきたかという証しみたいなものでしょうか。
それぐらい,この映画は当時の共産圏においては,反道徳的かつ反体制的な傾向作品であったことでしょう。しかもかなりあからさまに毒が効いている。
冒頭のタイトルロールで古ぼけた戦争映像を挿入し,それが衝撃の(?)ラストへとつながる凝った構成。そして最後の一句は・・
「踏みにじられたサラダだけを可愛そうと思わない人にこの映画を捧げる」
この2年後の68年,チェコは「プラハの春」の改革と,それに続くソ連軍介入による大弾圧にさらされるわけですが,そんな情勢を背景に・・
(党幹部の)パーティーの贅沢なご馳走を無邪気に踏みにじるのは,そりゃお行儀悪いかもしれないけど,「人間」そのものを踏みにじる行為はどうなんだ!みたいな感じでしょうかね。
自由と平和に慣れた日本人には,こういう世界の屈折的な表現センスは,感覚的にピンとこないところがありますが,おそらく,様々な暗喩が散りばめられているのでしょう。
まあ,60年代的サイケ感覚なオシャレ映画として観てしまうのが,いちばん罪がないんですけどね。(^^


コメント